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2008年5月 学校の森づくり
2008/4/26
朝9時過ぎ。オフだったはずの一日が、オンから始まる休日土曜。目の前の仕事を片付け、お昼過ぎにオフィスをとりあえず後にする。電車に揺られること1時間弱。うす曇りの空の下、埼玉県の大宮高校へと向かっていった。
学校とは何の縁もない生活をしている私が高校へ向かったのには、もちろんわけがある。今日はこの大宮高校で植樹祭が行われるのだ。指導は、もちろん宮脇昭先生。毎日新聞の協力を得て、高校での森づくりが行われることになっている。高校の敷地に宮脇方式の森をつくるのは、これが全国で初めてだ。小学校や中学校では前例があるが、高校ではいまだかつてない。歴史の長い県立高校で、植樹祭が開かれるというのだから何か理由があったのだろう。聞けば、校長先生の熱い思いと志の故であるそうだ。トップが決断をすれば、物事は早く進む。これは、企業でも、学校でも、きっとどこでも同じことなのだろう。
久しぶりに宮脇先生や関係者と現場でお会いし、高校一年生40人が参加するというリーダー研修から合流することにする。今回の植樹祭参加者は、入学したばかりの1年生360名、そして希望者の2、3年生。さらには地域の方や一般募集で、全部で約500名という構成である。学内の敷地に53種類の土地本来の木を約3294本。この学校に通っている高校生自らが木を植えていくというのだから、非常に素晴らしい植樹祭だ。今まで様々な土地で、私も子供や学生たちと木を植えてきたが、たいがい、子供たちにとって普段はそれほどには関係のない場所、たとえば公園などであり、そうしょっちゅう、木の成長を見ることができない場所であったのだ。しかし、これが、学校となると話は違う。小学校であれ、中学校であれ、そして今回のような高校であれ、自分たちが毎日通い、日々生活をする場所に、自分たちで木を植え、森を作るというのは、非常に彼らにとって「リアル」な経験になるのである。
リーダー研修の際、「どれくらい大きくなるのかな~」と質問をしてくれた女の子たちがいた。彼女たちには、まだこれからの森の姿が想像できない。それも当然だろう。そこで、「1、2年後には、みんなの背より大きくなるよ。卒業する時には、3メートルくらいかな。二十歳になって成人式に行ったら、みんなでここに集まってみて。たぶん、5メートルくらいになって森になっているからね。びっくりするくらい大きくなるよ」、そんなことを言ってみた。「えぇ~?そんなに大きくなるの~?すご~い楽しみ~!」。彼女たちが、驚きの声をあげたのは言うまでもない。
木々の成長を目の前で日々感じ、そして節目の際には今日この日を振り返り、自分たちの成長をも知ることができる。それが学校での植樹祭の最大のメリットであり、もっとも心に必要な教育なのかもしれない。
時折パラパラと落ちてくる雨粒の中、心配になりながら空を見上げる。今までかつて植樹祭本番で雨に降られたことのない私は、祈るように願っていた。リーダー研修が終わると同時に、高校生たちは体育館へと移動した。このまま雨よ、降らないでちょうだい。そう思いながら私も関係者と一緒に遅れて体育館へと向かう。開会式では主催者挨拶、来賓挨拶、そして宮脇先生の植樹指導と続く。が、体育館の屋根には、なんだかものすごい音が響いていた。外を見やると、どしゃぶりの雨。これが15分早かったら、確実に外でびしょぬれになっていたことだろう。ひっきりなしに降り続ける雨を眺めながら、「お願いだからあと30分で止んでちょうだい」、そう思っていた。開会式が終りを迎えた時にこの雨では、もうどうしようもなくなってしまう。
宮脇先生の熱のこもった植樹指導が終わり、その後開会式が終わると、終了予定時間が5分ほど押していた。外の雨はどうなっただろうと不安に思っていたが、高校生たちがレインコートを羽織って外に出だした頃には、雨が、ほとんどあがっていたのである。宮脇先生のカメラ係の私は、カメラを濡らすわけにもいかず、用意されていたレインコートを羽織ったが、ほとんど必要ないほどに雨は止んでいた。あれだけどしゃ降りだった雨も、開会式の終わる直前に、どこかへ消え去ってくれたらしい。毎度ながら、宮脇先生の雨逃れのパワーに感謝である。びしょ濡れになることなど全くなく、私は先生と現場へ向かうことにした。時折、高校生たちにやり方を教えたり、一緒に植えたりと、元気な先生の姿をカメラに収めると同時に、私も現場を久々に楽しむことにした。元気な高校生たちもやっているうちにどんどん夢中になり、「結構楽しいな~」、「もうちょっとちゃんとやれよ~」などと声を出しながらみんな一生懸命やっている。土に触れ、木を植えるという初めての経験は、彼らにとって新鮮な時間というだけではなく、自然や命を感じるという大切な体験にもなっただろうか。まだ入学して1カ月足らずという15歳、16歳の若い彼らにとって、今日の日が色濃い思い出に残る1日となったとしたら、部外者の私にとってもやはり嬉しいものである。
植樹が終わりにさしかかり、次の地へと向かう宮脇先生をお見送りしたのち、最後の手直しと片づけに勤しむことにする。天気もなんとかもったし、服が濡れることもなかった。降水確率90%くらいだったにもかかわらず、これだけ雨を逃れられたのだから、感謝すべきことだろう。片づけを済ませ、関係者に挨拶をしたのち、仲間数人と一緒に学校を離れることにした。私がこの先この大宮高校を訪れることは、おそらく一度あるかないかだろう。それでも、5年後、10年後に森ができていることは、確かな未来だ。そんな近い将来への経過を、学生たちには見守っていてほしいな、そんなことを思っていた。
駅近くのカフェで一息したのち、電車に再び揺られ、東京へと戻る。誰もいない真っ暗のオフィスに到着し、またしてもしばらくの間仕事に没頭することにした。オフィスでひとり仕事をしていると、今日一日何もなかったような錯覚をふっと覚えてしまう。とはいえ、確実に、今日この日に3000本以上の命が、木々が、大地で息づき始めたのだ。そう思えば、殺伐としたオフィスでも、ちょっと心に潤いが生まれてくる。そんなことを繰り返し思いながら、今年もこの植樹シーズンを過ごしていくのだろう。
一日お世話になった皆様に、そして高校生たちに、感謝。
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