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日志


2009年3月

『up for it 』

 

2009/2/10

 

 

最近私は、実にいい1枚のアルバムに出会った。時々行く港区の図書館で、偶然見つけたジャズのCDである。

 

 

もともと好きなミュージシャンなのだが、あまりにもそのアルバム数が多く、すべての楽曲を手に入れるのは不可能に近い。そんなときに図書館で運良く当たりの1枚に出会えたのだから、幸運と呼ぶべきだろう。アップテンポのものから、静かで落ち着いたもの、そして時には即興で独特の世界を奏でるジャズピアニスト、キース・ジャレット氏のアルバム『up for it』である。ドラムとベースを合わせたトリオでの演奏だが、その音楽は脱帽してしまうほど素晴らしく、1曲目を聞いた途端に、これは当たりだと瞬間的に嬉しくなってしまった。私の好きな「SOME DAY MY PRINCE WILL COME」が入っていたのでついつい借りてしまったのだが、それ以外に名曲「枯葉」、そしてオリジナルの「up for it」がとりわけすごく、最近はこればっかりずっと聞いている。

 

 

聞くだけで気持ちが明るくなるアルバム、『up for it』。

 

 

まだしばらくの間、一緒に過ごすことになりそうだ。

 

 

 

2008年9月

サイトウキネンを聴きに

 

2008/8/17

 

 

8時過ぎ。一路東京を目指し、その後新宿経由で長野県松本市へ。特急あずさに1年ぶりに乗り、ゆっくりと車内で過ごした後、涼しさ心地よい夏の松本へと到着する。

 

 

この時期に松本にやってくるのは、もう、毎年恒例と言ってもいいだろう。目的は、世界の小澤こと、マエストロ小澤征爾氏が総監督を務める「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」の音楽祭だ。今年はマエストロの指揮するオーケストラはチケットをとらなかったが、毎回楽しみにしている室内楽「ふれあいコンサートⅠ」を聴きに、松本までやってきたわけである。普段であれば松本で1泊するのだが、日曜日であること、またお昼過ぎからのコンサートであることもあり、日帰りでの松本観光と相成った。

 

 

お昼過ぎに松本駅に到着後、ネットで調べておいたレストランへと向かう。せっかく松本までやってきたのだから、美味しいお蕎麦か美味しい野菜が食べたいと思っていたのだが、なかなかいい感じの店が見つからず諦めていたところ、偶然見つけたホテル「ブエナビスタ」内のレストランである。こんなホテルが松本にあったのかと思うほどにお洒落で素敵なホテル、そしてレストランである。駅から歩いて10分以内とアクセスもいいが、繁華街とは別の方向ということもあり、適度に空いていてゆっくりとランチを頂けるのがうれしいところだ。この日のメニュー、夏野菜カレーなどをたっぷり堪能し、ポットで出して頂いた紅茶で満足しすっかり眠くなる。カレーにミニトマトがごろっとはいっているなんて、初めての経験である。しかも、さっと火が通されているだけの玉ねぎが、びっくりするほど甘かった。ということは、よほど甘く美味しい玉ねぎであるのだろう。新鮮な感覚のカレーに、松本にきて良かったなと、ひとりにこにこ微笑んでしまう。

 

 

ホテルを離れ、コンサート会場であるザ・ハーモニーホールへ。松本駅から電車で2駅の距離だが、電車が1時間に1本しかないため、前もって計画していないと大変なことになるという立地にある。が、何度来てもこのホールは良くできていて、携帯電話の電波はしっかり遮断されているし、パイプオルガンはあるし、クラシックの演奏にはぴったりだなと思ってしまう。

 

ホール内に入り、コンサートグッズを眺めてみる。昨年、一昨年と、毎回ここに来る度に、限定品のタンブラー(ウォールマグ社製)を買っていたのだが、今年は見当たらず、どうしたものかとスタッフに訊いてみた。すると、残念ながら今年は販売なしとのこと。「今年はないんですよ、すみません。ご希望があったこと、事務局に伝えておきますね」とボランティアスタッフの方の優しい対応。今年はたまたま6月の終わりに北海道に行った際に、帰りのAIRDOの機内販売で白クマ君のタンブラーを買ってあったので不自由はしないのだが、ちょっと無くなったのを知り、残念に思う。来年はぜひ復活して頂きたいものである。

 

会場内でふらふらしていると、偶然前から知っている顔がやってきた。あまりにもふいに現れたので、「はっ?!なんでここにいるの?!」と仰天しすぎてしまい、まともな会話が成り立たない。まったく思いもよらないところで思いもよらぬ友人に出くわすと、人間は思考回路がおかしくなるということを、身をもって体験する。

 

しばらく話をしたのち、コンサート会場へ。前から数えて数列目という運の良い席だったが、どういうわけか周りの数席が開いている。お盆シーズン最終日だからであろうか。それとも、来られなかっただけだろうか。そんなことを思いながら、室内楽の世界へと誘われる。演奏直前、後ろのほうがざわめきだし、何かと思えば、マエストロ小澤さんがひょこっと現れた。一時、体調を崩されていた小澤さんも、お元気そうな様子である。観客席から一緒にお聴きになられるようで、私もちょっと嬉しくなった。

 

 

今回の演奏曲。 ラヴェルの「弦楽四重奏曲ヘ長調」、バイオリン奏者ロバート・マン作曲の「スリー・カインズ・オヴ・スロー」、そして最後にドヴォルザークの「ピアノ五重奏曲 イ長調 作品81」という3部構成だ。バイオリンには、ロバート・マン氏、渡辺實和子氏、そしてヴィオラに川本嘉子氏、チェロに原田禎夫氏、ピアノに長尾洋史氏という構成で、毎度ながらも豪華な組み合わせである。なかでも、ロバート・マン氏はかなりのお歳であるのだが、すべての演奏をこなされ私は脱帽であった。最初の四重奏の演奏が始まった時点で、「あぁ、松本まで来てよかったな」と思ったが、最後の「ピアノ五重奏曲」を聴いていたら、あまりにも幸せな音と旋律で、体中の汚れたもの全てがどこかへはらはらと消え落ちていくような、そんな感覚さえした。それはまるで、細胞のひとつひとつに新鮮な水分とエネルギーが充満していくような感覚でさえもある。なんなのだろう、この音楽の不思議さは。人間が作り出すものが、これほどまでに人を、心を、体を、そして脳を幸せにすることができるのだということを、私はまたしてもここ松本で学ばされたような気がしていた。音を楽しむということは、人生を楽しむということでもあるのだろう。そんなことをしみじみと思いながら、拍手喝采の中、舞台に向かってただ手を叩いていた。

 

 

素敵だったのは、最後の一幕だ。鳴りやまない拍手の中、小澤さんが後ろからひょいひょいと舞台に向かって走って行ったのである。あまりの素晴らしい演奏で、舞台に駆け寄ったのだろうと思いきや、小澤さんは観客席に向かい、両手のひらで下におさえるようなジェスチャーをした。拍手をそっととめようとされたのだ。拍手が落ち着いたところで、小澤さんはこう言葉を放たれた。

 

 

「彼、先月の20日で88歳!!!」

 

 

そう、ロバート・マン氏の年齢である。たしか80代だとは思っていたが、88歳になられたとは驚きである。その途端、またしても爆発的な拍手が起こったのは言うまでもない。最高のパフォーマンスを2時間近くにわたり披露されたのだから、そのすごさには敬服するしかなかった。今年もまたこの素晴らしい演奏を聴くことができたことに、ただ感謝である。

 

 

満ち足りた気分でホールを後にし、松本駅方面へ。少し散策したのち、再びもと来た道をあずさに乗って戻ることにした。

 

 

涼しく心地よく、幸せな松本の一日があっという間に過ぎていった。

 

 

 

2008年8月

最近気になるこのCM vol.1

 

2008/7/16

 

 

そういえば、突然だが、最近私には好きなCMがある。もう1か月近く前から流れているが、その音楽を耳にする度にふっとテレビに釘付けになってしまうCMである。何かといえば、日産車TEANACMだ。最初は豊川悦司氏の和服姿が印象的なものだったが、最近はこれまた和服姿が美しく、おメメがぱっちりの壇れい様が登場するものである。そしてまた「おもてなし」というキャッチコピーが印象的なCMでもある。とはいえ私がより好きなのは、CMの構成よりも、密かに流れている音楽のほうである。使われている曲は、ジャズの名曲中の名曲「Waltz for Debby」であり、私が好きなビル・エヴァンス氏の代表作だ。 この楽曲、もう50年以上前のものであり、世界中のミュージシャンが数え切れないほどカバーしているわけだが、今回も女性ボーカルの素敵な声、しかも日本語でカバーされたものが、CMのバックに流れているのである。私は気になって、この歌い手を調べてみたところ、土岐麻子さんという方だった。歌手として、またナレーターとしても活躍されているらしく、いろいろCDも出されているという。が、肝心のこの「Waltz for Debby」については、CMのために収録された曲であり、発売は予定されていないという。あぁ、なんてもったいない。こんなに素敵な音楽をCMの中でとどめてしまうなんて。きっと私同様、欲しがっている人は世の中にたくさんいらっしゃるに違いない。というわけで、私は前々からこのCMを見るたびに、あぁ、全部聴きたいなぁと願ってやまないのである。

 

 

売ってくれないかなぁ。にわかジャズファンのためにもさ。

 

 

2007年10月

「引き」の力か、直感か

 

2007/10/8

 

3連休最後の日。

 

遅めのお昼ごはんを食べながら、ふと気になってテレビをつけると、なんとそこにはオーボエ奏者の宮本文昭氏が映っていた。「なに?!?!」と思ってよく見ると、その番組はなんと、小澤征爾氏率いる「サイトウ・キネン・フェスティバル」の特別番組であり、NHKBSで流れていたものだった。新聞で時間を調べると、何気に始まったばかりだということに気がつく。なんて運がいいのだろう。

 

それは約3時間に渡るプログラムで、今年の89月に長野県松本市で開かれていたサイトウ・キネン・フェスティバル松本のコンサート映像や、過去のオーケストラの映像などが盛りだくさんという素敵な番組であった。オーボエ奏者の宮本さんは長年にわたり、サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーであったが、今では演奏活動を引退されていることもあり、今年のサイトウ・キネン・フェスティバルには演奏者としては参加されていない。そんな宮本さんが、過去のコンサートの解説や、マエストロ小澤氏との思い出などを話されるという、とても興味深い番組であった。私自身にとっても、今年のサイトウ・キネンでは、マエストロの指揮するオーケストラやオペラを見ることができなかったので、かなりありがたい機会でもあった。さらにはマエストロの昔の映像や、最近のインタビューなども含まれており、かなり楽しめるつくりで、いい意味でNHKっぽいなと感じた3時間でもあった。

 

たまたまつけたテレビで、時間ぴったりにどんぴしゃな番組が始まったりすると、これも何かの「引き」の力か、直感なのかなと思うことがある。そんな嬉しい「引力」はこれからもっともっと強くなってほしいし、そのためには、やっぱり「生」と「命」に触れて感性を磨くことが必要なのだろうと思っている。

 

 

そんな「生」の音を、来年も松本で聴けるといいな。そんなことを思ってみた。

 

 

 

2007年9月

サイトウ・キネン・フェスティバル松本へ

 

2007/8/15

 

お盆ど真ん中のこの日。午後から仕事の休みを取り、新宿から「あずさ」に乗って一路松本へ。今宵から松本市内で開かれる「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」のオープニングである「ふれあいコンサートⅠ」を聴きに行くためだ。

 

マエストロ小澤征爾氏率いるサイトウ・キネンの音楽祭に訪れるのはこれで3年目。室内楽、オーケストラ、オペラなど、さまざまなタイプのコンサートが約3週間の間、豪華メンバーにより連日行われるという日本でもトップクラスの音楽祭だ。私も毎年複数のプログラムを楽しんでいたのだが、今回は日程的に制限もあり、オープニングコンサートだけを楽しむべく、松本へと向かったのである。

 

松本市内に到着後、ホテルへチェックイン。その後会場となる「ザ・ハーモニーホール」へ向かう。昨年も訪れているため、心なしか気が楽である。開演前、コンサートグッズを物色し、今年も販売されていたタンブラーをひとつ買い求めることにする。去年訪れた際にもここでタンブラーを買ったのだが、それ以降、ほぼ毎日使え、かーなり便利かつエコという大満足なアイテムだったのだ。一年間使い込んだこともあり、少々ボロボロになりつつあるため、これからは二代目タンブラーと同時並行的に使っていこうと、今回もすぐに購入を決める。今年は、1日限定20個というアイテムとなっており、その日のコンサートプログラムや日付が入っているという魅力的なグッズにもなっている。つまり、私と同じタンブラーはあと19個しかないわけだ、この世の中に。なかなか、嬉しくも楽しいコンサートグッズである。1800円というのも、泣かせるのであった。

 

そんなこんなをしているうちに、開演時間に。今回は、事前案内のプログラムから変更が出ており、聴きたかった演目がなくなっていたりしたのが少々残念である。とはいえ、ヴァイオリン:ロバート・マン、渡辺實和子、ヴィオラ:店村眞積、チェロ:原田禎夫、ピアノ:江口玲と、豪華メンバーが変わることもなく、約2時間の間、ものすごく濃密な時間が流れていったのである。

 

なかでも「語りと音楽」のコーナーでは、「ラフカディオ・ハーン」の怪談話「破られた約束」を女性の語りと、ヴァイオリン、そしてピアノの組み合わせで見事に展開しており、夏の夜にぴったりのおどろおどろしい世界が繰り広げられた。あまりのすごさに、私は音楽の底知れぬ可能性に恐れ入ったのである。ちなみに、「ラフカディオ・ハーン」と聞いてすぐにピンと来る人がどのくらいいるのかは謎だが、日本名は「小泉八雲」である。日本びいきというか、日本人に帰化までした八雲が生み出す怪談話というのは、はっきり言って、超怖い。それが、語り手の金切り声と、弦楽器と打楽器の音で恐ろしいほどに見事に表現されており、会場内にいた人は鳥肌ものであったのだ。小さい子なら泣いてしまうかもしれないというほどの恐ろしさに、並々ならぬ音楽のレベルを垣間見たような気がしていた。

 

演目最後には、ロバート・マン、渡辺實和子、店村眞積、原田禎夫という豪華4氏での四重奏が待っていた。確か昨年はモーツァルトのカルテットだったが、今回はバルトークの「弦楽四重奏曲第6番 Sz114」というプログラムである。何気に私にとってはバルトークの音楽は難解なので、ちょっと構えてしまったのだが、やはりなんとなく難しい曲調で頭と心の中がぐるんぐるんしてしまったのである。とは言え、ただ単に難しいというのではなく、喜怒哀楽の音色が次から次へとダイレクトに響いてきて、まるで大きな波が幾度も襲ってくるかのような、すさまじくエネルギッシュな曲だったのだ。おそらく、同じこのカルテットをCDで聴けばそれほどぐらぐらと心が揺さぶられることはないのだろうが、とにもかくにも、奏でている4人のパワー、そして驚くほどにぴったりと合う息づかいがあまりにも凄すぎて、私は思わず、「この4人、化け物だ・・・」と思ってしまったのだった。一体全体、人のパワーというのは、どこまで計り知れないものなのだろう。きっと、わざわざお金と時間をかけて、日本中、いや世界中からここ松本まで人が集まってくるというのは、やはり「生」のパワーを感じたいからに他ならないのだろう。ただ単に曲を聴きたいだけならば、CDでもいいのである。しかし、それ以上の何か、それでは得られない何かを求め、人はわざわざやってくるのだ。生きている「人」、「楽器」、「空間」から生み出されるその時一瞬だけの「生」の力を大事にしたい。そう思う人がこれからも減らないことを願いたいものである。

 

空恐ろしいとでも言うべきすさまじい演奏が終わりを迎えた後、会場内の拍手はいつまでもいつまでも鳴り止むことはなかった。幾度ものカーテンコールが続けられた後、ようやくコンサートが終了となり、会場内の客席が動き始めていった。途中から会場内に現れていたマエストロ小澤氏も実にご機嫌のご様子で、一緒の時間を共有できた私は、なんだか妙に嬉しくなってしまった。本当に、いい、コンサートだった。できることならばこの時間を、もっと、誰かに、共有してほしかった。

 

会場を離れ、一時間に一本の電車に揺られ、松本駅へ。

 

 

今年も夏が終わりに向かっているなぁなんて思いながら、松本での夜が更けていく。

 
 
2007年6月

素晴らしき音楽家達との時間

 
2007/5/8
 
夜、仕事を切り上げ大急ぎで上野へ。
 
今宵は前から予定を入れていたコンサートの日。ジャズ界のピアニストとして名高い、キース・ジャレットがトリオでコンサートを開くことになっている。
 
キースの演奏は昨年も聴いたのだが、トリオのライブはこれが初めて。ソロコンサートでは、とんでもない集中力で即興の演奏がされるため、張り詰めたような静けさとただならぬ緊張感が館内を占めているのだが、トリオではそんな空気も無く、実にリラックスした心地よい雰囲気が広がっている。
 
一番下のクラスのチケットを買った私だが、思ったよりも席が空いていることにいささかの驚きを覚えてしまう。平日の夜だからだろうか。それとも、一番安い席だからだろうか。とは言え、そんなことも演奏にはおかまいなし。キースの弾むような踊るようななんとも甘い演奏に、粘り気のある官能的なベース、そして体の芯まで心地よく響くドラムが絡みあって、なんとも幸せな演奏が続いていく。
 
演奏も中盤に入ると、私は信じられないほどに気持ちがよすぎて、もう夢心地、いや、眠りの境地にまで到ってしまっていた。それはそれは気持ちがよすぎて、目をつむらずにはいられないほどだ。ふと一瞬意識が遠くへ飛んでしまったほどに、うっとりと気持ちが緩んでしまっていた。こんなに身も心もほぐされて心地よくなるライブは生まれて初めてだ。世界の素晴らしき音楽家達から、なんだか幸せなプレゼントをもらったような感覚を覚えていた。
 
演奏終了後、ふらふらの足取りで帰宅の途へ。またしても、心地よくバスに揺られて眠りに落ちてしまったのは言うまでも無い。
 
 
素晴らしき音楽家達との時間に、感謝。
 
 
 
 
 
 
 
 
2007年4月

最後の音色

 
2007/3/28
 
 
夜6時半過ぎ。大急ぎで上野の東京文化会館へと向う。
 
運良く残りわずかのチケットが取れたために、今宵は急遽コンサートとなったのである。今日のアーティスト、それはオーボエ奏者の宮本文昭氏。今夜のコンサートは宮本氏にとっても、観客にとっても、「ラスト・ファイナルコンサート」となる。今夜を含めて残り3回のコンサートで、宮本さんはオーボエ奏者としての演奏活動を終了されるのだ。「2007年3月にオーボエの演奏活動を終える」。それを初めて聞いたのは、たしか2005年のマエストロ小澤征爾氏率いるサイトウ・キネンオーケストラのステージだった気がする。それから月日はあっという間に流れ、宮本さんがオーボエを置く時が来てしまった。チケットはいつでもどこでも即完売だったため、毎度悔しい思いをしていたのだが、ぎりぎりになって今宵のチケットがまだわずかに余っていることに気が付き、「これは行かねば!」と意気込んで来たわけである。
 
宮本さんの演奏を生で聞くのはこれで数度目である。初めて聴いた時には、「オーボエってこんなにすごかったの?!」と全身に鳥肌が立つような感覚を覚えたものだ。それ以来、オーボエの優しく暖かな音色にすっかりとりこになったのだが、今日の宮本氏の演奏も、それはそれは素晴らしくも心地よく、楽しくもスリリングで、私は気持ちよくなりすぎていた。それは例えてみれば、どこかハチミツのような優しい甘さにつつまれたようなほわんとした音色なのである。言ってみれば、私はそのハチミツに魅了されているクマのプーさんみたいな存在なのかもしれないが、その芳しくもまろやかなオーボエにすっかりはまり、「はぁ、このオーボエが聴けなくなるなんて、もったいない~」と心底思っていたのである。
 
そんな素晴らしき宮本さんのコンサートには、ちょいと不思議な特徴がある。演奏を終えてマイクを持ち、いったん喋りだすと、妙にトークが長いのである。しかも、ほわーんとした感じでトークが進み、おだやかーに喋りがつづくので、時間の感覚がなんだかゆるくなる。そして気がつくと、「はっ!時間がっ!」と、思いっきり予定の時間を押し捲り、「早く、巻いて巻いて!」と焦って演奏することになるわけである。今夜も、宮本さんとゆかりのある豪華ゲストが多数出演されたため、昔話に花が咲いてしまい、後半戦の半分も行かない時点で、時計は9時をまわっていた。クラシックなどでは大概2時間くらいの演奏時間が一般的で、その間にもちろん20分の休憩があるのだが、今日は開演が6時45分くらいで、休憩が20分、それにもかかわらず9時の時点でまだまだ終わっていないのだから、スタッフも観客もちょいと冷や冷やものだろう。宮本さんは、「今日は、ここ、12時まで借りてありますから!」と笑いを取っていたが、私も心の中で、「今日、帰れるかな・・・・」と心配したものである。「しゃべりを短くしても、このまま行くと、曲カットかも!」というくらいに押し捲りつつも、最後のほうでは次から次へと素晴らしい演奏がなんとかテンポよく続いたのである。
 
今宵演奏された曲は、私の大好きなものも多く、宮本さんの代表曲である「風笛」はもちろんのこと、「My Favorite song」、「As time goes by 」も演奏され私はすっかりご機嫌である。オーボエというと、「クラシックだけでしょ?」と思われがちだが、宮本さんの演奏されるジャンルは実に幅広く、ジャズやポップス、そして日本の雅楽と合わせたような実に不思議なニューミュージックまでもある。その幅広さと、チャレンジ精神が実に素敵である。とは言え、何度も言うが、こんなに素晴らしく、そして世界トップクラスのオーボエ奏者の宮本さんもこれで演奏活動を終了される。悲しい。「何でやめるの!?」と数え切れないくらいに訊かれたというし、私も「なんで~!?」と思うのだが、「一番良い時に引き際よくやめて、次の新しい音楽人生に進みたい」ということらしい。これからは演奏活動ではなく、音楽指導や指揮者としての活動もお考えらしい。これからの活躍を祈るばかりである。
 
全ての演奏を終え、満足満足で時計を見ると、時刻は既に10時を回っていた。実に3時間以上もかかっていたわけである。とは言え、最後の最後のコンサートを、これだけ楽しめたのだから本当に満足である。最後の宮本さんの演奏を聴けてよかったなと思うと同時に、もともと宮本さんを知るきっかけとなったサイトウ・キネンオーケストラに偶然出会えたのも、それはそれは運良くありがたいことなんだなとしみじみ思う。
 
いろいろなものに、どうもありがとう。
 
 
2007年1月

奇跡のピアニスト

2007/1/18
 
これは、前夜、六本木での話。
 
7時半ごろ。雨の中の六本木へと辿り着き、芋洗坂へと足を延ばす。目的地は、「スイートベイジル STB139」という、一見不思議な名前のお店。中身はライブハウスとダイニング&カフェといったところだ。
 
今日私がここにやってきたのは、もちろんライブを聴くためだ。以前から楽しみにしていたのだが、今日のプレイヤーはピアニストの舘野泉氏。「奇跡のピアニスト/左手のピアニスト」としてもNHKドキュメンタリーなどで紹介されているので、ご存知の方も多いだろう。舘野氏のピアノを生で伺うのは、これで二度目。とはいえ、ライブハウスでの演奏というのは、やっぱりなんだか不思議な感じである。どちらかといえば、サントリーホールなどのクラシックな雰囲気のイメージがあるのだが、今日はより観客とも近く、そしてフレンドリーな会場での演奏である。なんだか楽しみである。
 
開演は8時ということもあり、7時半ごろに到着すると、会場内はすでに食事をしているお客さん達でにぎわっていた。友たちと合流し、早速にお食事を頂くことになる。メニューも豊富で、手がかけられているし、きちんと美味しいものばかり。お酒はもちろん、ソフトドリンクまで充実しており、飲めない私にも嬉しい配慮だ。とりわけ、お店の名前からもわかるように、ハーブを使ったお料理やドリンクが豊富なのが特徴なのだろう。私は、ハーブティーを飲みながら、お食事、そしてデザートを頂くことにする。青山にあるBlueNoteとはだいぶ違う雰囲気だが、こちらのほうが、より落ち着いた大人向けとでもいった感じだろうか。スタッフの対応も気持ちよいし、雰囲気も良い。偶然ここに足を踏み入れたとは言え、なんだか嬉しい発見である。
 
8時過ぎ。素敵な色のシャツとネクタイが印象的な舘野さんが登場。舘野さんは御年70歳を迎えておられるが、とってもお元気そうでこちらまで嬉しくなる。過去にわずらった脳溢血から右半身不随となり、今は基本的に左手だけでピアノを弾いていらっしゃるのだが、はっきりいって、そんなハンデは伝わってこない。目をつぶったら、片手で弾いているとは信じられないほどなのだ。
 
そんな舘野さんの演奏曲は少し変わったものが多い。いや、日本人には馴染みの薄いものが多いというべきだろう。長年、フィンランドを拠点に活動しておられるため、楽曲も北欧のものが多いようで、なんとも不思議な世界のピアノ曲が聴けることも魅力的だ。今回は、そんな異空間のあるクラシック曲から、ジャズ、ロック、タンゴ、ブルースなどなど、左手にアレンジされた素敵な、そして実に心地よい曲が約1時間半ほど奏でられた。普段の大き目のコンサートホールでは味わえないようなリラックス感に包まれ、そしてやわらかで透明感のある音に寄り添っていたら、私はあんまりにも気持ちよすぎて眠たくなってしまう。こんなこと滅多にないのだが、もうすやすやと眠り姫と化してしまうのではないかというほどに、すぅーっと心が落ち着き、どこか遠くへ飛んでいってしまいそうなほどに、眠くなっていた。いや、きっと、気持ちよくなっていたのは、私だけではない。会場に集まった、大人の皆様(おそらくは40代以上の方ばかり)も心地よくなっていたに違いない。その、美しいピアノの旋律と、舘野さんのやわらかくも温かい言葉にすっかり酔いしれて。

アンコールには、私の好きなアヴェ・マリアが奏でられた。アヴェ・マリアには色々なタイプがあるが、今宵は私が好きなものだったので、ますます嬉しく、そしてすやすやと眠りにつきそうになってしまう。なんとも、最後まで癒しの力が溢れる舘野さんのピアノ。美味しいお料理から始まり、ほんわかとあたたかい舘野さんのピアノにすっかり満足して、六本木をあとにした。 

帰り道、バスに乗っていると、あっという間に目的地へと到着。どうやら、深い深いところまですとんと落ちて、すやすやと眠っていたらしい。

どこまでも、ふわふわ感溢れるいい夜に、感謝。

 

2006年11月

ジョン・メイヤー君との夜

 

2006/11/9 

なにやらあわただしい木曜の朝。振り回されながら、昼過ぎに近くの病院へと健康診断に向かう。最近体重が少し増えたことや、検査のための食事制限があって、昨晩から何も食べていないため、なんとなくふらふらする。職場の仲間と病院に足を運び、次々と検査。嫌いな採血をなんとか終え、すべての検査を終了。ご飯を抜いたため体重はもとに戻っていたが、身長が前に比べ2センチ縮んで156センチである。ちょっとショックである。

終了直前、医師による問診が行われる。診察室に入ると珍しく女医さんである。今まではいつも男性だったため、ちょっとほっとして前々から少し気になっていたけとを打ち明ける。するとすぐにその症状から予想される病気を判断し、これからとるべき行動を優しくわかりやすく教えてくれる。私には検討もつかないことだったため、的確な診断にありがたく思う。しかし同時に、「一般の病院では検査ができないので、大きな大学病院などで精密検査を受けてください。今日の血液検査の結果が出る前になるべく早めにね」と言われ、言いようのない不安感に襲われる。

健康診断終了後、大急ぎで食事をとり、仕事に戻る。大慌てで仕事を済ませ、疲れきったところで、職場を出て一路恵比寿駅へ。向かった先は恵比寿ガーデンホール。何気に恵比寿は私がほとんど足を運んだことのない、都内でも珍しい場所だ。しかも恵比寿のガーデンプレイスもなんと初めてだ。東京や横浜、千葉の複合型施設にはほとんど何度も足を運んでいるというのにも関わらず、なぜかガーデンプレイスには全く縁がない。そんな恵比寿で今宵は大好きなジョン・メイヤー君の貴重なライブである。よりによって採血した日にオールスタンディングライブとは私には極めて危険だが、心配をよそに最高に気持ちよい時間を過ごす。あまり来日していないため、私にとっては初めてのライブだが、とにかくメイヤー君の天才ぶりが大いに発揮された素晴らしすぎるライブだった。独特のハスキーな歌声に信じられないほどのギターテクニックにと、若い才能にひたすら驚き、体中で楽しさを満喫した。スタンディングだったため、多少マナーの悪い客に邪魔された感はあるが、それでも心から気持ちよい時間だった。ライブ終了後、今まで持っていなかったインディーズ時代のアルバムとオリジナルの子供用Tシャツを一枚購入する。なんだか幸せな瞬間である。 

ガーデンホールを離れ、11時過ぎに帰宅。買ったばかりのメイヤー君のアルバムは、恐ろしいほどに完成度の高い素晴らしい楽曲たちだった。おそらくは22歳くらいに作られたこのCD。19歳であのバークレー音楽院をドロップアウトした過去を持つメイヤー君の持つ高い高い音楽性にただただ驚かされる。

朝からの長い1日。いろいろあったけど、メイヤー君になぐさめられた。感謝。

2006年10月

長月最後は吉祥寺にて

 
2006/9/30
 
長月最後の1日。相も変わらず、今日もびっちり予定を入れてしまう。「こんなに入れて大丈夫かな・・・」と自分の体を心配するのだが、ま、何とかなるかと1日どうにか過ごすことにする。
 
朝の9時過ぎ。母とともに教会へ。その後、東京方面へ。
 
11時半ごろ。ジムでしばしの運動に勤しむ。有酸素運動を始めようと、マシーンについているテレビをつけると、なんと、チック・コリア上原ひろみのピアノセッションが流れているではないか。一体なんでこんなすごい2人が一緒に出てるんだ?!と驚いていたら、どうやらYAMAHAがスポンサーのテレビ番組だったらしい(「音遊人」(みゅーじん)という番組らしかったが、どうやら時間帯がこれから変わることになるらしい)。そんな貴重で珍しいジャズピアニスト同士のセッションをヘッドフォンで夢中で聴いていたら、妙にいつもより気合を入れて走ってしまう。挙句の果てには番組が終わった時点で、息が切れてヘロヘロになる(つまり、バカ)。
 
いい汗をかいた後、ストレッチをして、岩盤浴。最近お決まりのコースである。たくさん汗を流して、体もすっきりフレッシュ。
 
ジムを出て、今度は一路、護国寺駅へ。今日も恒例の日舞のお稽古である。2時ごろに到着し、「4時ごろには出られるかなぁ~」と思っていたら、結局混んでいて稽古場を出るのが、5時前になる。ごぉーん。ま、仕方ない・・・。こんなもんだ、土曜の稽古場は。。。
 
さて、次に向うは、吉祥寺駅。地下鉄を乗り継いで、5時半過ぎに到着。この吉祥寺、大学時代の4年間を過した私にとっては、特別な思い入れのある街である。第2の故郷とも言える程に大好きで、いまだに住みたいとも思っている。とは言え、足を運ぶのは、実にひさしぶり。記憶にないので、1年か2年近くは足が遠のいていたのだろう。久々に吉祥寺に降り立つと、かつては普通であったであろう喧騒と賑わいに、いささか驚きを隠せない。商店街に入れば、えぇ?と思うほどに、店は変わっている。まぁ、無理もない。住んでいた時でさえ、2週間ほど吉祥寺を離れると、街の様子がどこかしら変わっていたものだ。もはや、変化の遂げない街など、どこにもない。吉祥寺とは言え、それは同じこと。とは言え、不思議な異国気分に包まれながら歩いていると、「あ、懐かしい」、「あ~まだお店あるんだ」という安堵感も徐々に覚えてくる。老舗のお菓子やさんや、大好きなカフェ。そして本屋さんや雑貨屋さん。良く良く見て行けば、それほどまでは変化はないのかもしれない。長く続いている店は、今も変わらず地元の人たちに愛されている。なんだか、ほっとしてしまう。
 
商店街を一巡し、お気に入りのパン屋さんに立ち寄る。閉店近くであまり商品がなかったが、いくつかを買い求め、翌朝の朝食とすることにする。その後、駅に戻って、後輩と待ち合わせ。吉祥寺時代をともに過した後輩と思い出の街に戻るのは、なんだか楽しい時間である。
 
後輩と合流後、予約を入れておいたお店へと向う。「珍しいお店だから」と彼女には断っておいた、ちょっと変わったお店である。ま、単なるレストランでも飲み屋でもカフェでもないという意味だけで、吉祥寺では超有名なお店なのだが、大学時代に足を運んでいた私の大好きな一店である。ビルに到着後、地下へもぐりこみ、いざ、大好きなジャズバー「SOMETIME」へ。
 
扉を開くと、時刻はまだ7時前ということもあって、ほとんどお客さんがいないらしい。早めに入ってゆっくり食事をと思っていた私にはぴったりである。レンガ造りで渋く温かい、そしてどこか大人の雰囲気の「SOMETIME」。大学を卒業してから一度も訪れていなかったため、実に5年以上はご無沙汰である。懐かしいお店の中に入り、いい雰囲気の中、後輩もご機嫌になる。本当に美味しいお料理に様々なドリンク、そしてSOMETIME名物のチーズケーキで心も体も満足である。もちろん、ジャズの演奏がいいことは言うまでもない。7時半過ぎから始められたジャズの生演奏。今宵はピアノにハーモニカ、そしてパーカッションという、素人の私には一種不思議な組合せのジャズである。女性ボーカリストの歌声と、どこか懐かしい音色のハーモニカ。そして、心地よいリズムを刻む、パーカッション。実にいいものである。やっぱり、ジャズは小さな場所で聴いた方がいいかもな、なんて思ってしまう。ここ数年、ジャズピアノのコンサートなどにもたまには足を運んでいたが、大抵が大き目のホールなどだったのだ。やはり、小さな空間で勢いのあるジャズはいいなぁなんて、ひとりしみじみと思ってしまう。
 
周りを見渡せば、友達同士で訪れている人。夫婦やカップルで楽しんでいる人々。そして、一人でふらっと足を運んでいるおじ様も多いようだ。なんか、こんな場所にひとりで来るおじ様ってすごいカッコイイじゃないかと思ってしまう。別に、格好や見た目がどうこう言っているのではない。ただ純粋にジャズを楽しみに来ているような感じの方は、素敵だなと思ってしまうのだ。私も、これから時折ふらっと一人で来られるような大人になりたいものである。
 
さて、今宵のセレクションは、ボサノバのナンバー数曲と、エリック・クラプトンのスタンダードナンバーのアレンジ。更には、私の大好きな「My Favorite Song」のちょっと変わったアレンジ。素人の私でも、玄人のおじ様にも受けそうな、楽しく、気持ちの良い曲たちである。約1時間のステージですっかり酔いしれ、大満足。もちろん3ステージの全てをみたいところだが、全部を見ると夜中になってしまうので、後ろ髪をひかれつつ、1stステージだけで店を後にする。
 
その後、吉祥寺名物「LEMON DROP」のカフェに寄るが、私の大好きなバナナモンブランは扱っていないという。仕方なく、もう一軒の系列店に行くが、そこでもあえなく品切れである。せっかくこのモンブランを食べるために立ち寄ったのに、究極残念である(凹)。とはいえ、他の大きく甘いケーキを変わったハーブティーと頂きながら、後輩との会話に花が咲く。
 
10時前。吉祥寺を離れる時間がやってくる。中央線に乗り込み、途中で後輩と別れる。その後、八王子経由で、一路神奈川県橋本駅へ。11時前に到着し、予約を入れておいたホテルへとチェックイン。
 
長い1日はこうして終了。そして、明日はもっと恐ろしくハードな1日が待っている。ふぅー。
 
2006年10月

歌姫に泣く金曜の夜

 
2006/9/29
 
 
鬱気味の金曜夜。
 
日舞を終えて帰宅し、テレビをつけると、いつものようにフジテレビで「僕らの音楽」が流れていた。
 
大抵金曜日は、この時間に帰宅する日々が続いている。「僕らの音楽」は、初めの数分は見られないことが多いのだが、それでも残りの20分ほどを服を着替えながら見る習慣がすっかりついてしまっている。
 
今夜も何気なく流していたこの番組。出演されていたのは、歌手の中村 中(あたる)さんだった。名前だけしか知らなかったが、まだデビューしたばかりの方らしく、少々驚きを覚える。聞けば、色々過去があるらしい。何も知らなかった私は、ついついテレビに釘付けになっていた。
 
彼女の歌声を聴いた時、なんだか背中にゾクゾクした感じを覚えてしまった。あまり女性の歌声は普段好んで訊くことが多くないのだが、彼女の歌声は、まるでいい時代であった「昭和」の香りがどことなくするような、そして計り知れないほどの可能性とパワーを秘めたような力強い声だったのだ。デビューして間もないというのに、この番組に出るというのだから、相当な実力を認められているには違いない。
 
ぐいぐいとテレビに惹き付けられ、私は彼女が作詞・作曲したという曲で、いよいよ不覚にもぼろぼろと泣けてきてしまった。心をぐさっと一突きするようなその曲。あぁ、この人はすごい人生を送ってきたんだなと思うと同時に、これからの成長がある意味空恐ろしいとさえ感じてしまった。
 
 
力強い歌姫に泣かされた、金曜の夜。 (・・・泣き虫だな、最近 )
 
 
 
2006年9月

天才メイヤー君

 
 
2006/9/20
 
お昼休み。てくてくと本屋&CD屋に歩いていく。今日は9月の20日。少々買いたいものがあるのである。
 
おとついの新聞をパラパラめくっていた時、とあることに気がついた。それは、私の好きなミュージシャンが久々にオリジナルアルバムを出すというのである。あまり大きな記事ではなかったが、写真入りで載っていたので、私は妙に驚いた。そして同時に、実に3年ぶりのアルバムとあって、「あ、ちゃんと作ってたんだ」とある意味安堵を覚えてしまった。何せ、日本ではマイナー気味なミュージシャン。グラミー賞を取っているにもかかわらず、日本ではほとんど一般に知られていないようなのだ(新聞にもそう書いてある・・・)。
 
さて、そんな彼の名は、John Mayer/ジョン・メイヤー君である。年は私と2歳しか変わらなく、もうすぐ29歳。ルックスも音楽もばっちりのメイヤー君であるが、なぜか日本では知名度が低い。そもそも、私がメイヤー君を知ったのは、確かもう3年前になる。当時、夏休みの恒例行事として、アメリカのキャンプツアー、TREK AMERICAに参加していたのだが、その時にちょうどこのメイヤー君のセカンドアルバムがアメリカで大ブームだったのだ。折りしも、キャンプツアーのリーダーが非常に音楽センスがよく、車の中でこのメイヤー君のアルバムをかけていたのである。そして、時折ラジオからも彼の歌声が流れてきており、大いに気に入ってしまった私は、リーダーにアルバムのタイトルを聞いて、帰国した。そして、すぐさまCDを買い求めたというわけである。
 
それから約3年。しょっちゅう過去のアルバムを聞いていた私だが、久々の新作オリジナルと聞いて、なんだかワクワクしてしまう。ルックスもぐーんと素敵になっているし、いったいどんな声でどんなメロディーを奏でているのだろうと、ウキウキである(一枚のアルバムが出るというだけで、妙にテンションが上がってしまう、実に安上がりな人間でもある)。
 
早速新作CD「Continuum」を買いに行ったところ、検索機ではなんだかどうもみつからない。「あんまり知られてないから、ここでは入ってないか・・・」と諦めかけて帰ろうとした瞬間、売れ筋トップ3みたいなところに、ずらりと並べてあるではないか。「へ?こんなとこにあるの?」っと拍子抜けである。発売して間もないというのに。ともあれ、「わぁ~い、あったぁ~」とご満悦ですぐにCDをお買い上げである。
 
オフィスに戻り、早速PCで聞いてみることにする。すると、いきなり「どぉ~んっ」とメイヤー君にやられてしまう。いやー、すごい。やっぱり、メイヤー君は天才である。この素敵な歌声、心地よいメロディー、そして歌詞の良さとセンスの素晴らしさ。もう、メイヤー君の可能性と実力はとどまることを知らないのではないかと思ってしまう。前2作よりはロック調が若干抑えられているが、その分、シンプルながらもクオリティーの高さが目立つ曲が多い気がする。実にスタンダードで、実に気持ちよい曲が勢ぞろい。ライナーノーツか何かにも書いてあったが、いつ聞いても古くならない、実にベーシックで王道な曲ばかりなのだ。とはいえ、野暮ったさや、垢抜けない感じなどは一切なく、見事にかっこよくそして心が躍りそうなメロディーがぎっしりと詰まっている(ドライブにもぴったりな感じである)。メイヤー君を聴いていると、なんだかいつも気分が「スコーン」と抜けて、爽快な感じを覚える。とはいえ、そんな爽快感とともに、日曜の午後みたいなゆるゆるしたリラックス感もあるのが、これまたメイヤー君の素晴らしきポイントである。
 
どうやら11月には一夜限りのライブが恵比寿ガーデンホールで開催されるらしい。こんな歌声を生で聴ける機会は、まずもってない。毎日聴きこんで、エネルギーをもらいに行ってこよう。
 
 
素晴らしき、天才メイヤー君。オススメです。
 
 
(視聴&ダウンロード購入はこちらからでも。)
 
2006年9月

サイトウ・キネンの午後

 
2006/9/3
 
直射日光の厳しい松本を歩き続け、2時過ぎにようやくまつもと市民芸術館へと到着。松本駅からは15分ほどのため、歩いてやってくるお客さんで長い列ができている。
 
昨年も訪れたこの会場。馬蹄型の4階建てというオペラにぴったりのつくりである。横に広い会場は、窮屈感がなく、ひろびろとしている。中に入れば、この日を待ち侘びていたであろうという人の波。やはり日曜のオペラだけあって、正装で来られている方も多い。スーツやドレス、更にはお着物など。ワインのサービスなどもあり、観客は開演までのしばしの間、思い思いにこのサイトウ・キネン・フェスティバルの雰囲気を楽しんでいるように思える。
 
会場内に入り、4階までひたすら歩く。私にも結構つらいので、お年を召した方にはそうとうキツイのだろう(エレベーターもあった気もするが)。4階まで到着し、席を確認。下から二番目のチケットにもかかわらず、普通のコンサートの倍以上はする素晴らしいお値段。とは言え、ステージは遠い。直線距離はそう遠くは無いのだが、何せ4階。身を乗り出して見下ろす感じである。歌舞伎座の3階も辛いが、ここも結構大変である。4階でも1列目なのでそれなりに見えるのだが、2列目からはそうとう見難いのかもしれない。1列の差がいったいいくらの差になるんだろう?なんて思ってしまう(たぶん7000円・・・)。
 
開演を待ち、しばしお勉強の時。オペラは予習しないと頭のなかがごっちゃになってしまうのだ。何せストーリーも歌も、そして演奏もと楽しむべきものがたくさんある。舞台は見ないといけないし、でも、字幕も見ないと意味分からないし(歌はドイツ語や英語)、それに振っているマエストロ小澤征爾氏もみたいしと、大忙しなのである。そんなわけだから、大方のストーリー展開を頭に入れておかないと、もったいないことこの上ない。しばしプログラムを読み更け、頭の中に話を叩き込む。
 
さて、今日のサイトウ・キネン・フェスティバル松本の主演目はメンデルスゾーンのオラトリオ「エリア」。メンデルスゾーンといえば・・・・?と訊かれたら、えーっと、「結婚行進曲?」というレベルの私である(苦笑)。そもそもこの「エリア」はもともとオペラではなく、歌がメインの「オラトリオ」と呼ばれるジャンルらしいので、知らなくてもある意味フツーなのかもしれない(素人には)。オペラとオラトリオの違いさえもよく分かっていないのだが、ま、よしとする(いい加減)。
 
このオラトリオ「エリア」。ストーリーはこんな展開である。舞台は紀元前9世紀のイスラエル。旧約聖書に出てくる預言者「エリア」は、エホバの神ではない邪教への信仰が広まったことを受け、エホバの神の正当性を訴えて、その異教徒の預言者達と対決をすることになる。この預言者たちを滅ぼすことができたエリアだが、邪教を信仰していたイスラエルの王から命を狙われ、イスラエルから逃亡する羽目に陥る。そして最期には火の馬車に乗ってエリアはエホバの神の名の下に天国に召されていく。ま、こんな感じの話だが、最後はもちろん、神に救われるという預言と神への賛美の歌で終わることになっている。
 
開演後、オーケストラの音色が流れると、なんだか不思議な空気に包まれる。4階から見下ろす舞台は、1階で見るのとはおそらくかなり雰囲気が異なるのだろう。何せ、上からだと、舞台も、オーケストラも全てがよく見えるのだ。1階や2階であれば、オーケストラピットにいる奏者陣はほとんど隠れて見えないものなのだろうが、4階からだと丸見えである。奏者も、指揮を振るマエストロも、みーんながよく見える。ま、私にとっては、小澤さんの姿を遠くからでも拝見したいので、このほうがいいのかもしれない。とはいえ、やはり忙しい。舞台を見、歌を聴き、舞台脇の日本語訳をチラ見し、そして、音に耳を傾けながら、小澤さんのお姿に見入る。ずっと、その繰り返し。ただ、途中からはなるべく全体の雰囲気に浸るべしと、あんまり力まないように心がける。ただでさえオーケストラよりもオペラのほうが疲れがちなのである、私は。
 
ころころと曲調の変わるこの「エリア」。短めの曲が30曲から40曲ほど続くのだが、私はふと気が付いた。暗闇の中、ぼんやりと薄明かりを灯している譜面台がいくつも見えるのだが、そういえば、小澤さんのところだけが異様に明るく見える。角度のせいかと思ったが、よくよく考えれば、小澤さんは譜面を置いていないのだ。演奏時間は約2時間半。その長い楽曲の譜面はどこに?と思えば、それは小澤さんの頭と体の中にある。つまりは、譜面をすべて事前に叩き込んであるため、本番では一切使用しないのである。曲調の異なる数十曲の旋律と細かな音を全て体に染み込ませ、オーケストラの音色を優しく引き出していく小澤さんの姿は、いつも思うが、なんだかとっても素敵である。それは、一昨日の晩に見たアラン・ギルバート氏の振り方とも全く異なって見える。アラン氏の振り方は、まるで一本道の真ん中に立って、後ろに構えるオーケストラメンバーの音をぐいっとひとつにまとめて、肩に担いで前へ引っ張っていくような感じである。一方の小澤さんの振り方といえば、小澤さんの指が、オーケストラメンバーの奏でる音をやさしくたおやかに引き出し、全ての音をやわらかくゆるりとひとつに包み込んで、一段高い空間にそっとやさしくのせていく・・・みたいな感じである(とはいえ、この説明、分かる人には分かるとは思うが、フツーこの説明では分からないと思う・・・難 )。どっちが良いとか悪いとかではなく、それぞれの個性が十二分に発揮されているのだろうと思っている。あの独特な小澤さんのお姿は、お見かけするたびに、やっぱりなんだか感心してしまう。まぁ、「エリア」の舞台を見に来て、小澤さんの指揮ぶりに感動するのも変なのかも知れないのだが・・・。
 
圧倒的な歌唱力と体を揺さぶるようなオーケストラの演奏とで、会場内はずっとしびれたような空気になっていた。鳥肌が立ち、背筋が凍るような感覚。そして時には、歓喜溢れる賛美の歌声が響き渡り、まるでそこが荘厳な教会建築の中かと錯覚するほどだ。預言者「エリア」の生き方と、その信仰心を讃えるこのオラトリオ。パフォーマンスと歌声、そしてオーケストラの演奏に包まれていたら、ふとこんなことを考え始めていた。それは、人間の凄さだ。私はこの夏、カンボジアではアンコールワット遺跡群を訪れ、東北では山寺に上り、そして松本ではサイトウ・キネン・フェスティバル松本という芸術の世界に足を踏み入れた。そこに共通して流れているものは、人間の底知れぬ力と叡智のようなものだ。圧倒的な完成度をもつ芸術を生み出した人間って実はとんでもない生き物なのではないかと思ってしまったのだ。創造する力と情熱、そして完成させる努力と忍耐。仏教建築物と西洋音楽を一緒くたにしてしまうのは、実に浅はかなことなのかもしれないが、それでもやはり人間の魂と感性と言うのは、凄まじいものであるのだろう。もちろん、その精神力や芸術への探究心を持つ人間の足元には、大地という自然が広がっているわけではある。自然というその計り知れないパワーと恩恵無しには、人間が生活することなどできないのだが、ともに共生していくことの大切さと素晴らしさ、そして難しさというものをなんだか教わったような気がした。
 
「エリア」に浸ること約2時間半。最後は、歌い手と奏者がともに「アーメン」と大きな祈りをささげるような形で幕を閉じた。終わったその瞬間、「ブラボー」の声とともに、爆発的な拍手が沸きあがったことは、言うまでもない。あまりにも素晴らしい舞台には、どんなに拍手を送っても、しすぎるということはない。観客全員が、舞台上のひとりひとりに拍手を送り続けている一方で、オーケストラピットの小澤さんは、いつものようにメンバーひとりひとりと握手をし、その素晴らしい演奏力を讃えていた。今日は4日間行われた「エリア」の最終日なのだ。小澤さんは指揮台を離れ、一番近くのバイオリニストなどと握手をするだけではなく、いつものように、そしてごくごく当たり前に、メンバーの間をかき分けて、奥へとずかずか入っていく。遠く離れた奏者ともひとりずつ握手をし、肩をたたき、抱き合い、そしてずっと拍手をし続けている。奏者全員のパフォーマンスをそれぞれに褒め称え、ひとりずつひとりずつ優しく愛情をかけているのが、やはり小澤さんのお人柄と指揮者としてのカリスマ性なのかもしれない。他のオーケストラで、こんな様子は私はいまだに見たことがないのである。普通の指揮者は、演奏終了後、コンサートマスターやゲスト奏者だけと握手をしたり、抱き合ったりして、あとは普通に観客に顔を向けて、拍手を一人で受け止めているように見えるのだ。しかし、小澤さんは、観客へのお辞儀よりも何よりも真っ先に、オーケストラメンバー達のその素晴らしい演奏をひたすら褒め、そしてともに喜びと快感を分かち合っているような気がするのだ。クラッシック音楽経験の乏しい、私だからそう思うのかもしれないが、他の指揮者とは圧倒的に何かが違う小澤さんの素晴らしさは、こんなところにも現れているのではないかと思っている。この人間性と確かな技術、そしてフレッシュな感性が、「世界のオザワ」と賞賛される所以ではないのだろうか、と。鳴り止まない拍手と、幾度ものカーテンコールの後、会場には心地よい興奮と清清しい空気がしばらく残っていた。
 
 
あまりにも素晴らしすぎ、そしてあまりにも一生懸命見てしまったため、私はすでに倒壊寸前になっていた。手すりにつかまらないと、階段を歩けないほどである。相も変わらず、エネルギー使いすぎの悲しい性ではあるが、私にとってはそれだけ有意義なサイトウ・キネン・フェスティバル松本であったということだろう。小澤さんのエネルギーと情熱を今年ももらえて、本当に幸せであった。来年もまたそのパワーを頂きに松本まで足を延ばしたいものである。
 
6時半過ぎに松本を離れ、一路帰宅の途へ。10時半過ぎに家に着くと、何やら一通の郵便が。クラッシックの世界では有名な「ジャパン・アーツ」からのお知らせだ。なんとなく惹かれて中を見てみれば、そこには「舘野泉」の文字。そう、「奇跡のピアニスト」、「左手のピアニスト」と呼ばれる舘野泉氏のコンサート案内だ。今年も冬にそのお姿をお見かけできる日が来るらしい。いやはや、今から楽しみである。
 
 
どこまでもクラッシックづいている、9月最初の日曜日。もう、夏も、終わりです。
 
 
2006年9月

9月1日 松本にて

 
2006/9/1
 
お昼過ぎ、仕事を切り上げ、新宿方面へ。今日は午後休みをとって、先輩と松本へ出かけることになっている。
 
2時の特急あずさに乗り込み、一路松本駅へ。車内で、ゆるゆると飲み物を飲みながら、今日買った月刊誌を読みふける。移動中の読書タイムは至福のときである。
 
東京は雨模様だったが、松本に着いたあたりではすっかり晴天が広がっている。ありがたや「晴れ女」と思いながら、予約しておいた駅前のビジネスホテルへ。
 
しばらくした後、ホテルすぐそばのバスターミナルから路線バスに乗り込み、今宵のメインイベント、サイトウ・キネン・フェスティバル松本の会場「松本文化会館」へと向う。バスの中はサイトウ・キネンを楽しみにしている人たちでいっぱいだ。後ろの席では、おじいちゃんと孫娘が何やら可愛らしい会話をしている。「たくじせんたーいくんだよねー」というその女の子。「そうだよー。今年は大きな音聞こえるかねー」というおじいちゃん。「きょねんは、どぉーんってすごいおとがきこえたんだよぉ~」という孫娘。サイトウ・キネンのいくつかのプログラムにはきちんと託児サービスが用意されている。その女の子が、おじいちゃんと一緒に本物の音を会場で聞けるのも、あと数年後なのだろう。なんだか微笑ましい会話を聞いて、ちょっと心が暖かくなってしまった。
 
会場に到着後、サイトウ・キネン・グッズを眺め、いざ会場へ。今回の席は下から2番目のクラスのため、やはり席が遠い。下から2番目と言っても、それなりに高いのだが、そんなことも気にならないほどの力をこの音楽祭は秘めている。一階席の後ろ側のためステージは遠いが、そんなことより席がとれただけで、ラッキーなのだろう。
 
今宵のサイトウ・キネンは、私にとって今年2度目のコンサートである。そして明後日にもオペラを見ることになっている。なぜ私が3枚ものチケットを手にしたかというと、それは単なる「偶然」なのである。別に、意図して3枚取ったわけではない。そもそも、このサイトウ・キネン。チケットを取るのもえらく大変である。中でも、このフェスティバルの総監督、マエストロ小澤征爾氏が振るコンサートのチケットは、そうそう簡単に取れるものではない。いつもすぐさま完売なのである。一次発売の時点では、小澤さんの振るオーケストラや他のプログラムのチケットに応募したのだが、見事に全て落選してしまった。2次発売では、1次発売で余ったチケットが抽選で販売されることになっており、私はこれにいくつか応募したのである。ほとんどが「残り10席」などと激戦ぶりが予想されたため、私は先輩と友に3公演のチケットに応募した。このうちどれかにいければいいやと思って3種類のコンサートに応募したのである。が、しかし、この予想は見事に違った意味で裏切られた。なんと、全てのチケットが当選してしまったのである。既に8月に訪れている室内楽のコンサートチケットが1枚。今宵のオーケストラが2枚。そして小澤さんが振るオペラのチケットが2枚。以上、3公演がすべて当選してしまった。これは明らかに大いなる誤算である。室内楽のコンサートは手ごろだが、オケとオペラは両方とも下から2番目のクラスであるにもかかわらず、私には恐ろしく高価なものなのである。じゃぁ、キャンセルすればいいではないかと思うだろうが、そこが落とし穴。この2次発売。キャンセル不可なのである。とは言え、「残り10席」のチケットを手に出来る幸運はありがたい。ウレシイやら痛いやら、悲鳴をあげながらも、結局今日もサイトウ・キネンの世界にお邪魔することになる。
 
開演直前、ラフな白いシャツを身にまとった小澤さんが軽やかに会場に現れた。小澤さんはいつも足取りが軽い。肩肘はって、仰々しく現れたりもしない。今宵は舞台ではなく、観客席で一緒に演奏を楽しむことになっている。今日この日、9月1日に小澤さんを遠くからお見かけできて、幸せだなと思ったりもする。
 
開演後、サイトウ・キネン・オーケストラのメンバー、そして指揮者のアラン・ギルバード氏が舞台に現れる。良く知らないのだが、どうやら日系アメリカ人の方らしい。大きな体に、はっきりとした顔立ち。まだ40歳にも達していないのに、サイトウ・キネンのメンバーをまとめると言うのだから、相当な実力者なのだろう。なんだか初めての世界にちょっとワクワクしてしまう。
 
今宵のプログラムは、武満徹の「弦楽のためのレクイエム」、ヒルボリの「Exquisite Corpse」、そしてマーラーの「交響曲第5番 嬰ハ短調」である。はっきりいって、よく分からない。武満のレクイエムだけは聴いているはずなのだだが、レクイエムの独特な雰囲気がそれほど得意ではないので、あまりはっきりとメロディーが浮かんでこない。とりあえず、初めての気持ちで全てを受け入れることにする。
 
武満のレクイエムは、実に美しくも悲しい旋律で、なんだか不思議な気分になる。どこか静けさをたたえた映画音楽のよう。そして一曲目にこれをもってくるのは、玄人好みの選曲なんだろうなとも思ってしまう。全くクラッシックを聴かない人には、ちょっと引いてしまいそうなほどである。まぁ、そんな人、私も含めてここにいてはいけないのかもしれないが、武満の世界は、やっぱりどこか難しいなとも思う。もう少し大人になれば分かるのだろうか。
 
武満に続いてヒルボリの「Exquisite Corpse」。これまた全然分からない曲である。どうやら、スウェーデンの作曲家で、アラン氏の大切な一曲らしい。武満に続いて、これまた実に奇妙な曲である。支離滅裂のような旋律で、音色がかみ合っているべきなのか、ずれていていいのか、なんだかよく分からない不思議な世界である。混沌としていて、それでいて、なんだか最後は妙な迫力と爽快感がある。まぁ、これははっきりいって説明不可能な難解な曲である。まるで暗闇に彷徨って、何かに怯えながらも、一筋の明るい光をみつけて、そこに猛ダッシュしていくかのような雰囲気。実に、摩訶不思議な世界を堪能。なんだかすごいコンサートである。
 
2曲が終わると、まだ時刻は19時35分ほど。短めの2曲だったが、実に変わった選曲で、頭の中が良く分からなくなってくる。重いというか、暗いというか。
 
休憩を挟み、後半のプログラム待ち。サイトウ・キネンのコンサートでは、よくありがちな「開演に先立ちまして、お願い致します。携帯電話は~」とか、「これから20分の休憩をはさみます」とか、「以上持ちまして本日の公演は~」というアナウンスが流されない。開演する時も、休憩に入るときも、再度舞台が始まる時も、実にスマートである。おそらくみんなクラッシックに馴染んでいる人たちばかりなので、マナーもそれなりに守られているし、気持ちがいい。まぁ、中には失態しちゃう人もいるわけだが(物音たてたりとか)、それでも他の一般的なコンサートに比べれば、マナーもいいほうなのかもしれない。
 
8時前、後半のプログラム、マーラーの「交響曲第5番 嬰ハ短調」が始まる。この交響曲、何せ5楽章全て演奏されたので、非常に長い。時間にして1時間以上。とは言え、その長さをあまり感じさせないほどの、すんばらしい演奏だったのは言うまでも無い。はじめはなじみの無い旋律だったが、途中から、「あ、この曲だったか」と合点がいき、私は一気に聴き惚れてしまった(後に調べたところ、映画「ベニスに死す」に使用されていたらしい)。とりわけ、アラン氏の指揮が実に力強い。曲が盛り上がってくると、大きな体を一層大きくして、時折ジャンプするほどの力強さ。それはまるで、一本道の真ん中に立って、後ろに構えるオーケストラメンバーの音をぐいっとひとつにまとめて、肩に担いで前へ引っ張っていくような感じである。若手の指揮者とは思えないほどの統率力。ぐいぐいとまとめる力とボルテージを上げさせるような熱意が非常に印象に残った。当初、重い雰囲気の旋律も、第5楽章まで辿り着いた頃には、圧倒的な力を溜め込んで、華やかに突き抜けるような音の世界へと変わっていた。最後の音が鳴り響いた瞬間、拍手大喝采だったことは言うまでも無い。観客席にいた小澤さんは、1人立ち上がり、大きな拍手を送っている。まさしくそれは「ブラボー」という言葉で褒め称えられるべき演奏だった。
 
鳴り止まない拍手に何度も応え、数度のカーテンコール。会場はものすごい熱気に包まれていた。すると、アラン氏がみなの前でこう話す。「今日はセイジさんのお誕生日です」と。「待ってました!」とばかりに、場内全ての人が一気に沸きあがる。それは、実に歓喜な空気だった。さっきよりもより一層大きな拍手と「おめでとう!」の嵐。そうなのだ、今日9月1日は、小澤さんのお誕生日なのだ。御年71歳。ちょうど一年前の今日、70歳の古希を祝うチャリティーコンサートが同じ時間、同じ場所で開かれていた。豪華な奏者陣、さらには司会に筑紫哲也氏、そして私の斜め後ろには、SONYの出井元会長ご夫妻のお姿と、舞台も客席も実に豪華な顔ぶれであった。その時のコンサートも実に実に素晴らしく、そして突き抜けた気持ちのよさと幸せに満ちた空間だったのだ。今日のコンサートに足を運んでいる人は、もちろんコンサートの中身もさることながら、小澤さんのお誕生日をお祝いしたい気持ちを持っていたに違いない。沸きあがる拍手と、大歓声。アラン氏が舞台から何度も「こっちへ!!」と小澤さんを呼ぶが、小澤さんは恥ずかしそうに遠慮して、首をぶんぶんと横に振っている。そうなると、なんとしても舞台に上がらせたくなるのが、人間の心理である。拍手は次第に大きな手拍子とかわり、舞台上のアラン氏はついにみずから客席に降り立って、会場中央にいる小澤さんのもとへ駆け寄った。何度も首を横に振りながら、小澤さんはアラン氏に引っ張られて、とうとう舞台の上に。その瞬間、オーケストラから滑らかな「ハッピバースデー」が奏でられる。それは、それは、実に美しいバースデーソングだった。会場がひとつになり、観客もスタッフも、みんな笑顔で思い思いにお祝いの歌を口ずさんでいる。舞台上で恥ずかしそうにしている小澤さんが、なんとも可愛らしい。バースデーケーキは今年はなかったが、みんなの大きな拍手と大歓声で、小澤さんは照れながらも嬉しそうだった。なんかやるかなと思いきや、小澤さんはひょいっと客席に飛び降りて、そのまま走って自分のお席へ。偉大なマエストロは、いつも身軽で枠にはまらない。人間味溢れ、やさしくも謙虚な姿が、なんだかとっても嬉しかった。

全てを終え、バスに乗り込み、松本駅周辺へ。食事を済ませ、夜中に部屋でしばしの時。
 
 
満ち足りた気分のまま、松本の夜は更けていく。
 
 
 
 
2006年8月

東日本縦断☆晴れ女が行く ~1st Day サイトウ・キネンのオープニングを聴きに ~

 
2006/8/17
 
お昼過ぎ、仕事を終えた私は新宿駅へと向い、13時出発の特急あずさに乗り込んだ。今日からしばらく東日本を転々とすることになっている。
 
がら空きのあずさで向った先は長野県松本駅。今日からマエストロ小澤征爾氏が指揮をとる音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」が始まるのだ。偶然チケットが取れてしまったため、私はひとりこのサイトウ・キネンのオープニングを見るために松本へと足を向けた。
 
車内でゆるりと過していると、長野に入った辺りから雨が降り始める。雨など予想もしていなかった私は当然傘など持っていない。松本駅に着いたらビニール傘でも買うか。そんなことを思いつつ松本駅へ到着すると、見事に雨が上がっていた。ラッキー!と思いながら、今宵投宿するホテルへチェックイン。しばしゆるゆるしていると、またしても外は雨模様。今度こそ傘を買わないとダメか・・・。そう思いながらコンサートに向う時間になると、またしても雨は降り止んでいた。1日に2度とは運が良い。ありがたや~と感謝しつつ、松本駅から1時間に1本ほどのローカル線に乗り込み、会場のザ・ハーモニーホールへと向う。
 
会場近くの駅に辿り着くと、私はいささか不安を覚えていた。こんなところに会場あるの・・・・?と思うほど、あたりは住宅街だ。お店もほとんどなく、どこにサイトウ・キネンが聴けるホールがあるんだろうと不思議に思っていた。しばらくきょろきょろ歩いていると、木々の陰から素敵なホールが現れた。こじんまりとしているが、とっても落ち着いた良い雰囲気。初めてのホール、そして、初めてのオープニングにわくわくしつつ、会場内へ。
 
私がサイトウ・キネンを聴きに松本へ来るようになったのは、昨年からのことだ。2年ほど前からこの音楽祭に興味を持ち始めたが、初めて耳にした生のサイトウ・キネン・オーケストラは運良くもマエストロ小澤の70歳の誕生日コンサートだった。それ以来、すっかりそのパワーと音に惹かれ、はるばる松本まで聴きにきてしまうわけである。普段であれば、わざわざコンサートを聴きに、特急に乗ってホテルまでとってなんてことはもちろんできないわけだが、この音楽祭だけは特別である。もちろん私だけではなく、日本中いや、おそらくは海外からもたくさんの人がこのコンサートのために松本を訪れていることは確かである。マエストロの精力的な姿勢と超一流の音楽家たちが揃うコンサートだからこそ、多くの人々魅了し、惹き付けてやまないのだろうと思っている。松本市をあげた夏の大イベントは、私の中でも大切な年間行事になってきている。
 
ザ・ハーモニーホールの会場内に入ると、初日と言うこともあり報道陣が多く見受けられる。どうやら、マエストロの取材が行われていたらしい。会場内でお見かけできるかなーと思いながら、今日から売られているサイトウ・キネンのオリジナルグッズなどに目をやる。特にプログラム以外は興味がなかったのだが、今年から販売され始めた新商品のタンブラーが欲しくなってしまう。スターバックスやタリーズのカフェで売っていそうな、あのタンブラーである。オリジナルデザインが施されたそのタンブラー。周りのおば様たちは「タンブラーって何かしら~?」という感じで誰も購入していない模様。私はこの手の商品がいたく好きなので、ついつい買いたくなってしまった。しかも、デザインが4種もある。オーケストラメンバーの写真入りのもの。メンバーの名前入りのもの。さらには、サイトウ・キネンのプログラムデザインに近いもの。そして、かわいい楽器があしらわれたもの。やはり一番かわいいデザインの楽器のモチーフを買ってしまう。ここでしか売ってないと言われると、ますます欲しくなるのが人情ってもんである。初日かつ誰も買っていなかったこともあり、商品をお願いしてから手にするまでに5分ほどかかってしまったが、それもご愛嬌。みなさんボランティアスタッフなのである。お互い理解しあっていい音楽祭になるといいなと思いながら、無事にお買い上げ。かわいいタンブラーに実にご満悦である。
 
買い物も終え、ホール内に入ると、その中身に驚いた。なんとパイプオルガンがあるではないか。こんなところにあるとは思ってもみず、さらには携帯の電波もしっかりシャットされている完璧さに私はしばらく感心してしまった。ちゃんと良いホールなんだなということがすぐに分かる。小さくてもクオリティーの高い会場にますますワクワクしてしまう。
 
席に着くと同時に、舞台に用意されている可愛らしい楽器に気が付いた。一見ピアノだが、中身はチェンバロだ。調律師がその音色を確認している。生まれて初めてチェンバロの生の音を聞いた気がする。愛らしく、軽やかで、なんだか中世ヨーロッパみたいな音色である。どこかおもちゃっぽい音も実にかわいい。こんな素敵な楽器の演奏を聴けるのも楽しみだ。しかも、開演と同時にマエストロも会場内に現れた。体調不良でしばらく休養されていた小澤さんは、以前と変わらない優しい笑顔を見せてくれる。今年もサイトウ・キネンができて嬉しいんだろうなーなんて思ってしまった。
 
今宵のプログラム、実は直前に大幅な変更が出ていたため、私はちょっと残念に思っていた。名バイオリニストが体調不良で出られないと言うのだ。私はこの変更に当日まで気が付いていなかったので、会場についてしばし凹んでいた。とは言え、変更といってもそこはサイトウ・キネン。結果的にはとんでもなく満足するものとなる。3曲で構成されたコンサートは実に実に気持ちのよいものだった。1曲目には、バッハのバイオリンとチェンバロのためのソナタ。2曲目には武満徹のビトゥイーン・タイズ。両方とも私には馴染みのない楽曲だが、とんでもない演奏だと言うことは容易にわかる。すごすぎる演奏の後、3曲目にはモーツァルトの弦楽五重奏が用意されていた。奏者はヴァイオリン/川崎洋介、渡辺實和子。ヴィオラ/店村眞積、川本嘉子。チェロ/原田禎夫の5名である。この名前を見ただけでも、なんか凄そうだな・・・と予感はしていたのだが、その予感はとんでもない形で的中してしまう。
 
何十人もいるオーケストラの場合、その音の豊かさや勢いに圧倒されることが多い気がするが、今回の5人の演奏にはまったく違った点でただただ圧倒されていた。5人の息の取り方が実に見事なのだ。ただ単に楽器を演奏しているとうよりも、5人が心の底から楽しみながら、体を使ってパフォーマンスをしているといったほうがいいのかもしれない。息づかいさえも心地よい旋律の一部のように感じさせるその演奏は、本当に見事としかいいようがない。聴いているほうも演奏しているほうも、これほどまでに幸せになれる音楽があるのだろうか。奏者も私も時折笑顔になってしまう。まるで体の中の細胞ひとつひとつにエネルギーが満ちてゆき、体が軽くなったかのようだ。私は演奏を聴きながら、不思議なほどに満ち足りた幸せな感覚に浸っていた。そしてまた同時にこうも感じていた。「モーツァルトって本当に天才!」ということだ。モーツァルトはごくごくポピュラーで、いたるところで耳にでき、そのメロディーが脳を活性化させるなどという話もこれまた一般的ではあるが、自分がモーツァルトの音楽でこれほどまでに感銘を受けたことはただ一度もなかったのだ。しかし、今宵のモーツァルトは本当に凄まじかった。モーツァルトがいかに素晴らしいかを教えてもらったような気がした。この5人での五重奏は、あっても年に一度、サイトウ・キネンでしか行われないのが、実に惜しい。しかしそこがまた贅沢でもあり、生の音楽の素晴らしさなのかもしれない。
 
全ての楽曲が終了すると、幸福に満ちた観客はいつまでも鳴り止まない拍手を送り続けた。振り返ると客席中央でご覧になっていた小澤さんも身を乗り出して、満面の笑みで大きな拍手を送っている。やっぱり、今日の演奏はとんでもなかったんだなと再確認しながら、最後の最後まで私も拍手を続けていた。
 
大満足で会場を後にし、1時間に1本のローカル電車を待って、10時ごろに松本へ。ホテルに戻りくつろいでいると、またしても激しい雨が降り始めていた。今日は運良く3度も雨を免れたことになる。最近「晴れ女」になった気がしていたが、ありがたく今日はその通りだった。
 
今日1日の色々な幸運と、素晴らしいサイトウ・キネンとの出会いに感謝。
 
 
 
2006年7月

「Jazz」はマイナーか

 
2006/7/17 
 
突然ではあるが、私はジャズが大好きである。専門知識も多くの楽曲も全く持っていないが、とにかくジャズは大好きである。
 
そもそも私がいつからジャズを好きになったのかは自分自身でもあまり定かではない。中学か高校生の頃に、ピアノの先生に「次どんなのやりたい?」と訊かれ、「ジャズっぽいのをやりたい」と答えた記憶があるので、かなり前からジャズの雰囲気は好きだったのだろう(残念ながらピアノの先生はクラッシック専門だったので、ジャズピアノは習えなかったが)。
 
私がジャズを好きになったのには、おそらく父の影響が少なからずあったのだろうと思っている。私が幼い頃、父はしょっちゅうアメリカ映画を見ていた。テレビから流れる映画音楽は、まさしくグレン・ミラーのようなジャズやスウィングの世界だったのだ。今思えば、聴くともなしに耳にしていた音楽が、私の体と感覚に自然に吸収されていったのではないかと思う。そういえば、大学時代、大好きな小野リサさんのDream」というCDを偶然実家で聴いていたところ、父が異常に驚きを示したことがあった。まさしくそれは、父が幼い頃に聴いていた懐かしのメロディーそのものだったのだ。私はそれらの楽曲がグレン・ミラーの代表作であるということも知らず、ただなんとなく気に入っていたのだが、父にとってはあまりにも古くそしてあまりにも懐かしい(1930~40年代)楽曲だったため、「やっぱり血は争えないな」と妙に感慨深げな表情をしていたものだった。
 
そんなわけで私はずっとジャズが好きなのだが、ふとジャズについて考えてしまうことが起きた。
 
 
それは、とある場所で、初めて顔を会わせた人たちと話していたときのことである。「好きな音楽は?」との問いかけに、返ってきた答えは「J-POP」一辺倒だったのである。30代、40代を中心とした大人の男性たち10人以上の答えがこぞって「J-POP」であったので、私は一気に面食らってしまった。もちろん「J-POP」にも色々あるのだが、訊いてみればかなり偏った風の意見だったのだ。世の中に音楽の種類なんて山ほどあるではないか。洋楽ポップスにR&B。ロックにジャズにヒーリング。カントリーにボサノバ、クラシックまで。世の中にはいろんな素敵な音楽があるというのに、誰一人として「ジャズ」はおろか、洋楽という答えもない。一体全体どういうことなんだ。たまたま居合わせた方たちの趣味が偏っていたのだろうか。それとも「ジャズ」を毎日聴く私がやはりおかしいのだろうか。いや、そもそも「ジャズ」自体がマイナー過ぎなのだろうか。20代で「ジャズが好き」なんて言ったらまずいのだろうか。そんな考えさえ覚えてしまう。とはいえ、日本の若きジャズミュージシャンだってどんどん育っているのも事実だろう。松永貴志君に、矢野沙織ちゃんだっているではないか。一体全体なんでなのだろう。「たまたま」だったのか、それともそれが世の中の普通なのだろうか。
 
 
やはり「ジャズ」はマイナーなのだろうか。うーむ。

 

 

2006年3月

『心に花の咲く方へ』

2006/3/3
 
金曜日。今週もようやく終わりを迎えた。そして今宵はコンサートだ。あまり良い席ではないが、そんなわがままも言っていられない。ものすごく久々に残業なんぞは忘れることにして、仕事終了後、会社を飛び出る。
 
今夜のコンサート。なぜか開演が6時半。なんだそりゃ、である。平日のコンサートで6時半開演?! はっ?! 間違ってない?その時間?と訊きたくなるような時間設定だ。フツー、7時開演でしょ~!!と怒りたくなる。一体全体6時半にどーやって着けって言うんだ!と訊き返したくもなるが、仕方なくギリギリに九段下の駅に到着。
 
九段下といえば、もうお分かりだろう。どう考えたって、コンサート会場は武道館である。しかし、九段下の駅から武道館はキツイ。長い階段、長いエスカレーター、そして長い上り坂。しかも開演は6時半、である。ふぅー。
 
急いで会場へ到着。いつも思うが、武道館の客席は殺人的に急斜面で、恐ろしく怖い。降りるときもそっとみんな降りるし、ほんと大変だ。今回は2階席の真ん中あたりで、ステージは良く見えるが、やはり遠い。前回はたしか、NHKホールかどこかで前から3列目辺りだった事を考えれば、今回は恐ろしく遠い。ちなみに、武道館では忘れられないハプニングがある。だいぶ前だが、同じアーティストのコンサートで、あまりに興奮しすぎた後ろのお客さんが突然降ってきた。つまり、転げ落ちてきた。これにはまわりも冷や冷やである。雪崩が起きそうなほどの急斜面と、そして手すりもない客席の構造。ある意味ものすごく危険だ。そんなわけで、周りもちょいと周囲に気を配っている。
 
席に着くと、異様に男性客が多いのが目に付く。しかも1人できている人もうようよいる。その昔は男性がいると「おぉ~珍しい」と思うくらい少なく、1割ぐらいしかいなかったものだが、最近は3割くらいは男性のお客さんである。いやはや、時代は変わるものだ。
 
そんなことを思いつつ、開演を待つ。久々に大きい会場でなんだかドキドキする。開演直後、シンプルながらも、あまりにも力強く、美しく、艶のあるその声が一気に琴線に触れ、心が一瞬にしてさらわれた。不覚にもぼろぼろと涙が出る。いきなりこんなのは初めてだ。あまりにも凄すぎたからか、それとも心が弱っていたからか、よくわからないけれど、一気に涙が出た。「あぁ、やっぱりすごいな、ほんとにこの人は」そんなことを思いながら、一曲一曲を大事に聴く。あまりの歌声、そしてもう訳がわからないほど変で愛らしいトーク。かっこよさと可愛らしさのそのギャップに酔わされながらも、大切に声と言葉をかみしめる。そうだ、私が言葉が好きなのは、きっとこの歌詞のせいだ。そんなことを考えた。歌詞がなんだか独特なのだ。言い回し、選ぶ言葉。普通の人が書けないような独自な表現。そんなものをずっと吸収してきたから、きっと日本語の単語の持つ力が妙に今でも好きなのかもしれない。そんなことを感じていた。
 
トークを聞いて久々に大笑いし、歌を感じて久々に体全身が楽しくなる。あぁ、楽しい。これよ、これ、私に最近足りなかったのは。そんなことを思いながら、最後のほうでまた泣かされた。マイク一本で歌い上げるその力と声と魂は、本当にただ者ではないことをひしひしと感じさせる。言葉から情景が広がって、涙がぼろぼろこぼれてく。今までこんなことなかったのに。しかも、まわりからもすすり泣きが聞こえてくる。それくらい感動的なステージで、それはそれは幸せな2時間半だった。
 
最近ジャズやクラッシックばかり聴いていたけど、やっぱり帰る場所はここなのねと心から再実感。11歳から聴き始め、26歳の今になってもやっぱり会いにいって何度も聞き惚れてしまうのには、やっぱり本物の実力と魅力があるからなんだろう。
 
ほんと、偉大です、ASKAさん。今宵は格別に、完璧に、参りました。はぁ。

 

 

 

2006年2月

マエストロの悲報

2006/2/4
 
お昼頃、なんとなく新聞を見てみると、衝撃のニュース(といっても2日ほど遅れてから知ったのだが)。
 
マエストロ小澤征爾氏が年内活動休止・・・・・。
 
ごぉーーーーん。「えぇ~っ?!?! なんでぇ~?!」と衝撃である。てっきり先月の帯状疱疹は治られたものと思っていたのに、今度はもっともっと深刻なんて。病状は、帯状疱疹、急性気管支炎、慢性上顎洞炎と、素人の私にはよくわからない。でも、治療と療養で5ヶ月間・・・・。春のオペラも、夏のサイトウ・キネンもなし・・・・? ごぉーーーん。ショックである。悲しい。去年は3回もマエストロのお姿を拝めたというのに、今年はもう無理。。。無念。。。
 
とはいっても、何はともあれ健康第一。マエストロ、早く元気になりますように。。。ぐすん。。。
 
 
 
2005年12月

ケニア~お台場~上野 

2005/12/15
 
仕事をしていると、ひょんな方から電話が入る。植樹関係で日頃お世話になっているマスコミの方からだ。しばらくお話していると「来年の11月、ケニア行きますよね?」と当然のごとく誘われる。「へ?」と寝耳に水状態だが、結局、来年はたぶんアフリカにいくことに(とはいっても、仕事次第だから休みがとれるか全くわからないが、行って見たいな・・・と心底思う)。
 
お昼過ぎ、ひとりで外出。今日も環境関係のシンポジウム。豪華メンバーに惹かれて、急遽申し込みをしたのだった。ひさびさに都営バスに乗って、いざ東京ビッグサイトへ揺られ始める。しばらくぶりに乗ったバス、ふと気がつくと、前から気になっていた都営バスのキャラクターに心が奪われる。名前は「みんくる」。緑色のカワイイキャラクターだ。バス停には必ずこの「みんくる」がいるが、じーっと見たことはなかった。「みんくる」って、なんだろ・・・。としばらく考えてみる。「みんなのくるま」の略かな・・・?と、のんきに揺られていると、バスはレインボーブリッジへさしかかる。そして、適度な揺れからか、ものすごいスイマー(睡魔)に襲われる。ぽかぽかお日様をうけながら、うとうととバスの旅。のどかだ。
 
30分後、ビッグサイトに到着。みんくるバスを降り、いざ会場へ。1000人くらいは入るだろうか。しばしがらがらの会場で時を待つ。2時ごろ、ようやくシンポジウムがスタート。メインキャストである、小池百合子環境大臣がSPとともに現れる。テレビよりキレイかな。そして、ダイエーの林文子会長、さらに、デザイナーの菊池武夫氏。このお三方の環境問題への取り組みや意識についての話を伺う。ポイントは、消費者(とくに女性)の視点を生かして!とか、小さなことからコツコツと、といった感じで、さほど目新しさは自分にとってはない。が、それなりに面白かった。日頃やっていることの再確認という感じだったが、さらにエコ生活やろっという気になった。
 
続いて、女性多しのシンポジウム。クールビズキャンペーンを推し進めた博報堂の方が気になった。男性だ。男性の斬新な視点でクールビズが成功したのかと、ふむふむ納得する。でもそれって、行政の力か?と一瞬気になったが、ま、よしとする。長いシンポジウムを経て、ビッグサイトを後にする。夕暮れ時のキレイな空を眺めながら「みんくる」とともにバスに揺られて帰社。
 
残業後、大急ぎで上野駅へと向う。今日はチェロ界のプリンスこと、若手ソリスト、古川展生さんのコンサートだ。といっても、初めて古川さんのソロコンサートに足を運ぶ。マエストロ小澤征爾氏率いるサイトウ・キネン・オーケストラの一メンバーだったこともあり、大勢のオーケストラの中の1人としては知っていたが、今回はソロでのコンサート。チェロだけの音色なんて普段さして聴くこともないが、ちょっと興味がでてきたので、チケットをとってしまった。
 
会場の東京文化会館に着くと、既に開演3分前。ギリギリでホールに入る。ものすごく良い席だ。前から二列目。そして中央付近。会場の8割は女性だ。そして、私の周りは1人女性ばかり。以前から思っていたのだが、クラシックやジャズ、ボサノバなどのコンサートは、何の気兼ねもなしに1人で行くことができてしまう。邦楽だとちょっと気後れしたりするが、全然知らないアーティストでも、クラッシックなどであれば、落ち着いて座って音を楽しむことができるのが、とても魅力だし都合もいい。今年もたくさんのコンサートにふらりと足を運んだが、ひとりでじっくり音に聞き惚れるのも、悪くないと思う。しかし、以前にマエストロ小澤のチケットが手に入り喜んでいると、とある知り合いから「何枚取ったの?」と訊かれた。発売日直前に気がついたため、友に声をかける時間もなく、一枚だけ取ったのだが、それを言うと「え・・・?」と思いっきり引かれた。自分にとってはさして珍しいことでもないのだが、その人いわく「あんまりそういうことは言っちゃダメよ・・・」と忠告を受けた。どうやら、コンサートに1人でいくなんてもっての他らしい。そういうものなのかな・・・と凹んだが、興味もない人を無理やり誘うよりは、好きなものは一人でもどんどん聴きに行ったほうがいいと思うのだけれど・・・と思っているのである。
 
しかし、今宵は古川さん目当てに多くの1人女性が集っている。素晴らしい。周りを気にする必要もなく、開演を待つ。燕尾服で現れた古川さん、そして奏でられるチェロの音色に、一気に心も体も吸い込まれるような感じ。チェロってこんなに奥深くてステキな音だったんだと、改めて体感する。しかも、この古川さんが、文句無しにステキだ。後半からはカジュアルな装いで、誰もが好きな「Ave Maria」 や「Amazing Grace」、そして最近のチェロの代名詞の「リベルタンゴ」、そして「Silent Night」などのクリスマスにぴったりの曲なども披露される。途中から、あまりの古川さんのかっこよさと音の深さに魂が持ってかれそうになる。女性ばかりがファンになるのも納得。あまりにもステキな姿にしばし呆然としてしまいそうだ。
 
休憩時間、早速に古川さんのCD販売コーナーへと足を運ぶ。偶然近くにいたウンチクおじ様が「このCDが一番いいよ~」と連れの方に話しており、私もついついそれを買ってしまう(笑)。クラッシクではなく、ポピュラーなスタンダードナンバーをチェロで弾いた馴染みやすい一枚だ。そして、終演後、CDを買った人だけへの特別プレゼント。なんとサインまで頂いてしまう。ひさびさにミーハーになってしまった(笑)。やはり、即席販売会→サイン会の強みはものすごいなと実感。やっぱり、そこで感動したり、心を動かされ、心がぐらぐらしている時に、ご本人からサインを頂ける!と聞けば、誰もが何かしら買いたくなるのが、人間の心理というもの。まんまと戦略にはまり、購買欲を高められ、ニコニコ顔で会場を後にした。
 
それにしても、古川さん、ステキすぎる。
またコンサート行こうっと。。。
2005年12月

流行らないで~。

 
~まずはお礼にて
 
12/10(木)、12/11(日)と、知らない間に、かなりの方にアクセスを頂きました。毎日のように見て頂いている方、そしてたまたまアクセスして頂いた方、ありがとうございます~。どういった方に見て頂いているかこちらではわかりませんし、アクセス増加の謎も自分ではよくわかりませんが、拙い文章ばかりのブログにお越し頂き、どうもありがとうございますm(_ _)m 。雑多極まりないブログですが、これからもよろしくおねがいします。近々、ボルネオのマニアック?な写真をアップする予定ですので、また遊びに来てください~♪
 
 
~2005/12/11~
 
最近、耳が反応したこと。それは、現在テレビ放映されている「味の素」の宮沢りえちゃんが出演しているCMのBGM。耳が遠くからこのBGMを捉え、あれれ?とテレビに近寄ったところ、なんと私のお気に入りの曲では!とびっくり。アレンジが変わっているので、わかりにくいけれど、絶対にあの曲は・・・と、1人興奮してしまう。
 
しかも、おそらく最近朝のAMラジオの交通情報か天気予報のBGMで流れていたのも、同じ曲の違うアレンジバージョンだった気がする。
 
お願い、これ以上、流行らないで~~(とは言っても、往年のスタンダードなんだけどさ)。